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最近読んだ本の感想

ところで皆さんは毎日の診療、勉強、試験準備等で忙しいと思いますが、お正月をどう過ごされましたか?私はぼやっとしながらいくつかの本を読みました。

養老孟司さんの「見える日本、見えない日本」。何人もの著名な方達とのやり取りにはかなり目を開かれるものがありました。それぞれ面白かったけれど横尾忠則さん、岸田秀さん、ピーターバラカンさん、阿部謹也さん等との対話には、思わずうなりそうなところがありました。

猪瀬直樹さんの「道路の権力」と「続日本国の研究」。最近は「道路公団」の一件が案の定と言うか、やはりと言うか、結局は小泉さんの腰砕けで民間人の答申は取り入れられず、「一件落着」的な終わり方になり、猪瀬さんに対してもこの「道路の権力」を含め、あれこれ批判的に言う人が多いです。しかし、誰も完璧なんてことはないわけで、評論家でいるよりは、実行者になることが必要です。この点で私は猪瀬さんを評価しています。他に民間人、作家、評論家で誰がここまでやったでしょうか。日本の問題は多くの当事者が、他人事のような評論家的発言をし(情けないことに、本人達は気がつかないのかも知れませんが)、思考も決断も実践もしないことにあるのです。保身と責任回避。これは銀行も大企業も政治も官僚も、すべての分野の「リーダー」に共通して見られることです。大学人も含まれるでしょう。よく考えなければならないことです。

「クビ!論」。梅森浩一さんの経験談による解説です。大変参考になります。日本企業文化の洞察と、アングロサクソンとの違いの具体例を示してくれます。ここでも日本企業の「リーダー」の問題に結局はなってしまうのです。いつも言っているように、結局、戦後の日本では「役人とサラリーマン」だけで、「プロ」がいなかったということなのです。

岡崎久彦さんの「百年の遺産:日本外交史73話」です。以前にも読んだことがありますが、あらためて読んでみると実に勉強になります。もっと詳細に書くこともできたと思いますが、「産経新聞」への連載ということで文字数の制限もあったのでしょうね。Harvard大学を卒業した日露戦争時の大秀才、小村寿太郎の功罪、太平洋戦争のラバウル総司令官の今村均、硫黄島の栗林忠道中将等の軍人、重光葵や東郷重徳等の立派な外交官等々、勉強になるばかりでなく、著者のような外交官がこのような日本外交史を書いておいてくれることは大変ありがたいことです。

太平洋戦争終了直後の昭和29年9月の講演に加筆してできた永野護さんの「敗戦真相記」。広島県出身で、有名な永野兄弟(重雄、俊雄、鎮雄等)の一人です。第2次岸内閣で運輸大臣を努められた方です。大変洞察力に富む、明快な論旨です。しかし、ご本人は戦中にも衆議院議員をしていた位なのですから、何かできなかったのでしょうか。やむをえなかったとはいえ、結局は責任当事者であるよりは、評論家的行動だったのではないだろうか。これが、この本を読みながら私が考えたことです。この点では東海大学を立ち上げ、科学技術庁を設置し、戦前は東條総理大臣を批判して、40歳を超えた局長級官僚なのに「二等兵」で召集され、台湾へ船で行かされた(と言うことはほぼ確実に死ぬと言うこと)松前重義は立派だと思います。松前さんの書いた「二等兵物語」は人間の大きさに感動します。

浦壁伸周さんの「否定学のすすめ」。あの利根川先生も絶賛とか。やはり「常識」を否定し疑うことから創造が出る。この本を読むことから「学ぶ」のではなく、「発見する」というパラダイムへのシフトであると言う。発見するとは創造することなのである。傍観者から行為者へ。どこかで聞いたことがあるように思わないですか。

司馬遼太郎さんの「全講演集(4) 1988~1991」。相変わらずの博識と、場と観衆に対する題材の選定、それに肉付けされる話の面白さに圧倒されます。よくもこんなに知っていることがあるものだなと。こんな講演ができたらすばらしいですね。実際に聞いてみたかったです。

経済評論家、水谷研治さんの「日本の経済の恐ろしい未来」。これは何か本気で書いていると思えない内容でした。中身が薄く、洞察、考察が上滑りでつまらなかったです。そこで今週の書評で見つけた、東谷暁さんの「エコノミストは信用できるか」(文春新書)という本を購入してみました。これは大変面白そうです。有名な経済評論家やエコノミストが、バブル前後で折々に触れ、どの程度の、どんな発言をしているか、それらがどう変化しているのかを検証しています。エコノミストにとっては恐ろしそうな一冊です。この本の感想は、またこの場で紹介したいと思います。

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