3.11

「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その4

→English

宇田左近さんの著書「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」に書かせていただいた「解説」その4です。

【解説】異論を唱える義務―――私たち一人ひとりが「今」やらねばならないこと
元国会事故調査委員会委員長 黒川 清

4.海外からの高い評価

報告書に対する海外での評価は極めて高い。科学者団体として世界最大であり、国際的にも評価の高いAmerican Association for the Advancement of Science(この団体の活動の一つとして一流と評価の高い『Science』を毎週発行している)が、この私に2012年度の「Scientific Freedom and Responsibility Award」(註1)、また外交分野では評価の高い『Foreign Policy』誌が、私を「100 Top Global Thinkers 2012」(註2)に選出していることからも理解できよう。私が受賞者といっても、国会事故調チームを代表して受賞しているのは言うまでもない。特に後者の選考の理由という「For daring to tell a complacent country that groupthink can kill」にいたく感動したことを今でも覚えている。

また、この1年半あまり、海外の関係者からの会見、懇談等の要請、講演の招聘も多くある。私はできるだけお受けするようにしている。何しろ福島第一原子力発電所事故と、その対応は世界中の注目を集めていることであり、国会事故調の報告とその意味の理解を広めることは、日本国の信頼の構築にとって、極めて大事なプロセスと認識しているからだ。
特に海外の原子力関係者からの依頼、また大事故に対する危機管理に関係する方面からの面会、講演の依頼も多い。世界はこの大事故から学ぼうとしているのだ。残念ながら、彼らの多くから、日本の当事者(政府、官僚、東電、産業界、学会の責任者)たちに事故の根源的な原因を問うても、彼らにとって理解できるような回答がもらえないという不満をよく聞く。

海外や国際的な会合などで、「国会事故調」という委員会が「日本の憲政史上初」(註3)というと、多くの政府関係者や識者から「信じられない」と驚かれることが多い。英国では政府として重要な課題については、年に数本の独立委員会が設置されている。特にBSE(狂牛病)事件(註4)では極めて透明性の高いEUの独立調査委員会等の報告と提言を採用しつつ、対策を講じ、BSEの出現から20年経過して、初めて英国の牛肉が輸出されるようになったのだ。政府の信用が失われた時の国家のとるべき姿を現している一例といえる。
米国では歴史的な背景もあって、主として科学アカデミーなどに年間100程度の独立調査委員会が政府、議会などからの委託によって設置されている。福島第一原子力発電所事故については、2012年8月から2年間の予定で、独立した調査委員会が設置されて、今年の6月頃に報告書が提出される予定である。
2011年の夏、ノルウェーの首都オスロでは、中央官庁のビルが爆破され、その2時間後、多くの人で賑わう避暑地で銃の乱射事件(註5)が起きた。同じ1人の兇漢の仕業だった。この大事件に際して、立法府は速やかに独立調査委員会を設置した。その1年にわたる報告書(註6)では、政府(行政府)の監督の不手際を厳しく指摘し、首相と内閣の責任が激しく追及されたという。2012年11月にノルウェー首相の来日の際には、特に私に面会したいとの要請があり、1時間ほどの対談の機会が持たれた。
また、米英仏他の国の関係者、原子力関係者とも面談等の機会は多い。事故の根源的原因及び背景にはなにがあるのか、この宇田さんの本はその解明へのヒントを与えてくれている。


1. http://www.aaas.org/news/releases/2012/1203kurokawa_award.shtml
https://krkwtest.com/wp-content/uploads/typepad/aaasspeach.pdf (受賞の際の謝辞)
2. http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/11/26/the_fp_100_global_thinkers?page=0,41#thinker63
3. 白井誠著『国会法』2013年、信山社。
4. http://en.wikipedia.org/wiki/Bovine_spongiform_encephalopathy
5. https://en.wikipedia.org/wiki/2011_Norway_attacks
6. https://en.wikipedia.org/wiki/Gj%C3%B8rv_Report_(2012)

→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その1
→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その2
→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その3
→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その4
→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その5
→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その6(1)
→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その6(2)
→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その7
→「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その8

「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その3前のページ

「なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか」、私の解説 その5次のページ

関連記事

  1. エネルギー

    巨大構造物を訪問する:浜岡原発、君津製鉄所・発電所

    →English12月11日(日)、一日がかりで中部電…

  2. 3.11

    国会事故調 -4: 報告書が一般書店で発売へ

    →English私達の国会事故調の報告書は、国会で衆参両院議長に提出…

  3. 3.11

    ‘Be Movement’と私のインタビュー記事

    →English‘Be Movement’は、ウェブ時代の新し…

  4. 3.11

    国会による事故調査委員会報告書 -1

    →Englishご存知のように、私は、今年になって、このblogでも…

  5. フクシマ

    私の考えをJapan Times、そして東京大学医学部同窓会新聞「鉄門だより」に

    →English今年になっても国会事故調についての取材がいろいろあり…

  6. キャリア

    会津若松へ

    →English8月6日、会津若松に行ってきました。中…

  1. プロフェッショナル

    「ノーベル賞とアカデミー賞」対談のその後
  2. グローバル

    Harvard大学女性学長Faustさんの訪問
  3. グローバル

    St Gallen Symposiumへ参加、チャレンジしてみよう
  4. 未分類

    2007年12月
  5. facebook